6/18是フェリチータ的生日,官方也有放出祝賀小說,不過是原文WWW (這人狀態顯示為懶惰) 

 


 

 

「――以上が、コートカードサミットで決まった6月18日の剣のセリエの詳細な動きになる。何か確認事項はあるか?」

 ジョルジョの言葉にうなずきながら机上に広げた書面に目を落としていたフェリチータは、目の前に立つ人物たちを仰ぎ見る。

「午前中は何もしなくていいの?」

「お嬢は夜のパーティに万全で臨むのがその日の最優先事項。要は遅番という事だ」

 少女の真面目な質問に、ため息を堪えたアントニオが暗に体力を温存しろと伝え、口を尖らせたシモーネが言葉を重ねた。

「そうそう。アントニオの言うとおり、お嬢は夜に合わせて午前中はのんびりしてたら良いの!」

「その日は各セリエとも、稼働は午後から。午前中は諜報部の担当だよ。マーサやメイド・トリアーデたちは一日中忙しいだろうけど」

 厨房は夜に行われるパーティの準備のために、朝から戦場になるだろう。

 その時を思い、フェリチータは自分にできることがあればと手伝いに名乗りをあげようと口を開こうとした。が、そんな真面目な上司をよく理解している金髪の青年は、話の流れを強引に変えた。

「ところでお嬢、俺たちの頼みを聞いてくれないか?」

 意外な言葉にフェリチータは首をかしげる。ジョルジョがこのような物言いをするのは珍しい。

「頼み?」

「ああ。18日のパーティは『パーパの娘であるお嬢』を祝う盛大なものだし、俺たちは入れ替わり警備につくことになっている」

「うん」

 今しがた聞いた話だ。幹部であるフェリチータは会場内にいる事を求められているし、デュエロの優勝者として見届ける事柄も多い。対して、各セリエコートカード以下の者たちは会場巡回と館の警備を交代で行う事になっている。

 頼みとはパーティ会場での動きについてだろうか。

 気を引き締めて頷くフェリチータに、ジョルジョはふっと切れ長の目を細めた。

「お嬢は会場で、大アルカナたちに独占されるだろう」

「…………」

 仕事の話をしているのでは、なかったか。

 フェリチータの呆れたような視線を受けながら、至極真面目にジョルジョは続ける。

「夜は仕方ない。だから午前中、俺たちにもお嬢を祝う時間をくれないか?」

「そうよ。デュエロで優勝した後のお嬢の望みを叶える大事な日だっていうのはわかってるけど、私たちだって気楽にお祝いしたいんだからね!」

「17歳と言えば花も恥じらう娘盛り。そんな記念すべき日を仕事だけで終える事の方が問題だ」

「だいたい幹部連中はお嬢の事を独占しすぎなんだよ」

 要は、剣のセリエたちもフェリチータを思い切り祝いたいのだ。髪型占いは今日も絶好調だったと言うジョルジョは、前髪を流し笑いかける。

「どうか我々と共に朝食会を」

 この半年の間に距離を縮め、頼りにしてきた仲間たちの優しい心遣いに、フェリチータの呆れ顔も少し照れたような笑顔に変わる。

「ありがとう。この日はみんなと一緒に食べようかな」

「失礼します、お嬢様」

 軽いノックの音と共に、くせ毛の上に帽子を載せた男が顔をのぞかせた。残念ながら、ドアを一枚隔ててしまうと、入室することで自分がどのような被害をこうむるかなど予想はできない。

 ドアを振り返る4対の冷たい視線を前に、『間が悪い』という言葉が脳裏に浮かぶものの、一つ咳払いをしたルカは気持ちを切り替え職務を果たす。

「お嬢様、パーパとジョーリィがお嬢様を呼んでいるのですが、少しよろしいですか?」

「うん。わかった」

 おそらく数日後に迫ったパーティの話だろう。フェリチータは席を立ち、コートカードに微笑みかける。

「朝食会、楽しみにしているね。色々決まったら教えて」

「期待しててねー!」

「ちょ、朝食ですか!?」

 『朝食会』の言葉に反応したルカをからかうように、ラファエロの声が響く。

「そう。お嬢の誕生日当日、個人的にお嬢を祝う朝食会だよ。参加資格は大アルカナを持たない事」

「もしくは、大アルカナを2つ持っていること、だ」

「……そんな……わ、私だってお嬢様を個人的にお祝いしたいです!」

 アントニオとラファエロのコンビネーションに打ちひしがれたルカに、彼らの王が止めを刺す。

「悪いが、参加資格がないルカには遠慮してもらうしかないな。まあ、昼以降はお嬢のそばにいることになるんだ。それに13回もお嬢を祝ってきた従者なら我慢できるだろう?」

 雨に打たれる子犬のような顔を見たフェリチータは、コートカードの横を通りぬけながら「からかうのもいい加減にして」と言いながらルカを連れパーパの元へと向かうのだった。

 

◇ ◇ ◇

 

「お嬢様、明日でいよいよ17歳ですね」

「なんだか最近ますます綺麗になってきましたよね!」

「これが17歳の魅力というものでしょうか」

 

 メイド・トリアーデの明るい声に苦笑しながら、フェリチータは用意されたハーブティに口をつける。あれから時間は瞬く間に過ぎ、明日はいよいよ17歳の誕生日。ファミリー挙げてのパーティが開かれる日だ。

 

「お嬢様に素敵なカードが届いていますよ」

 

 メリエラから差し出されたカードには、美しい銀色の毛並みをした猫が描かれていた。猫の首には赤いリボンが巻かれている。

 差出人は……

 

「ミレーナ!」

 

 デュエロに臨む日々の中で出会った同世代の友人からの便りに目を輝かせる。

 無事を告げる挨拶に始まり、誕生日の祝福。カードに書かれた文字は決して長くはないけれど、自分宛ての言葉を目で追うだけで心が温かくなる。

 

「お嬢様、実はミレーナさんだけじゃなく、私たちからもプレゼントがあるんです」

 

 イザベラの声に顔を上げたフェリチータは、その手の中の包みに今更ながらに気づく。

 一体いつの間に手にしていたのだろうか。

 

「明日、私たちは一日中慌ただしいので、少し早いですがお持ちしました」

「お誕生日おめでとうございます、お嬢様!」

「気に入ってもらえると嬉しいです」

 

 フェリチータはイザベラに差し出された赤いリボンの包み紙を、大きく見開いた目で見つめる。

「これ……」

「私たちからの誕生日プレゼントですよ。さあ、開けてみてください」

 メリエラの後押しに、満面の笑みを浮かべたイザベラが手を更に差し出し、ドナテラが静かにうなずいた。

「ありがとう」

 頬を染めて受け取るフェリチータは、包みを開け綺麗な淡い緑の肌触りが良い生地を手に取った。

「綺麗だけど、なんだか大人っぽいワンピースだね……似合うかな?」

 いつも控えめなドナテラが口元をほころばせながら、ワンピースをフェリチータに当てる。

「……うん、お似合いです。お嬢様をほんの少し背伸びさせてくれる、シンプルなワンピースに仕立てました」

「ドナテラはデザインが得意なんですよ!」

「ルカに負けるつもりはありません」

 何故か得意げに胸を張るイザベラに、頷くドナテラ。ルカへの対抗意識を語りだすと長くなる。メリエラは苦笑し、そろそろ私たちも戻らないと、と退室を促す。

「お嬢様、せっかくですから明日の朝食会は、そのワンピースを着て行きませんか?」

「そうですよ! あくまでも『個人的』な時間だってあの人が……っと! 皆が言ってましたよ」

「きっとスーツ以外の方が喜ばれるんじゃないでしょうか」

 すとんとしたシルエットの美しいワンピース。

 フェリチータは改めてワンピースを当て、鏡を見る。

「髪はおろしていたほうがいいかな?」

 照れてはにかむ姿に、3人は大きくうなずくのだった。

 

 

 

 明日の夜、本当の意味でアルカナ・デュエロが終わる。

 

 ベッドに横になり、目を閉じると翌日に迫ったパーパからの発表が頭をよぎった。

 2か月前、父親の誕生日にあった発表は、フェリチータを絶望させ、同時に前へと進ませてくれた。だからこそ、あの時とは違う気持ちで明日を迎えられる。

 

 大アルカナを持つ仲間たち。
 そして自分を支えてくれた剣のセリエの仲間。
 たくさんの仲間たち。

(私は幸せだ……)

 フェリチータは仲間たちが自分を祝ってくれる事を思い、ぽかぽかと温まる心を感じ、スティグマータにそっと触れる。

 

 この絆をリ・アマンティは喜んでくれるだろう。

 

◇ ◇ ◇

 

「うー……ん」

 カサカサッ

 
「……?」

 フェリチータは、寝返りを打って自分が何かに当たったのを感じ取った。頬に触れる柔らかな感触。身を包むような華やかな香り。

 だが、その花の香りは1種類ではない。薔薇、パパーヴェロ、ヴィオラ、ジェラーニオ……。ルカが花の香りを調合したのだろうか? 寝ぼけた頭のまま重い瞼を持ち上げると、目の前には真っ赤に真っ赤な花束。

「!?」

 フェリチータは驚いてそのまま身を起こす。

 自分を中心にベッドに飾られた花束の数々。眠る時には確かに無かったそれは、ベッドの上から転がり落ちそうになりながら、危ういバランスを保っている。フェリチータは一番手近にあった薔薇の花束を手にした。
 とても立派な大輪の薔薇だ。先ほど頬に触れたのはこの薔薇の花びらだったのだろう。目を閉じて感じる花の香りに自然と口元が綻ぶ。

「いい香り……」

 目を開くと、手元のリボンに何か書いてあることに気が付いた。どの花束にもリボンがついており、この薔薇の花束には白いリボンが結ばれている。

 『誕生日おめでとう。17歳になった、初めての笑顔をありがとう。  ジョルジョ』

「……!」

 見透かされたようなメッセージに破顔したフェリチータは、他の花束のリボンにも目を通す。コートカードを始め、スートからの祝福の言葉もたくさん綴られている。

「剣のセリエ、皆からのプレゼントなんだ……」

 かつて幹部昇進のお祝いに花をもらったことを思い出す。あの時は素直になれず、思ったようなお礼の言葉を返すことが出来なかった。

 でも今度は笑顔で言えるだろう。

 (朝食会でみんなにお礼を言おう)

 結局、どこで朝食会が開かれるかは教えてもらえなかった。シモーネからは、迎えに行くから部屋で待っていて欲しいと言われている。

(それまでに花を花瓶に活けて、着替えないと。そうだ、時間が余ったら――)

 いつもの寝起きの悪さはどこへやら。フェリチータは迅速な行動に移るのだった。

 

◇ ◇ ◇

 

 コンコン

 

 ノックの音に気づき、フェリチータはドアに近づき開いた。

「おはよう……!?」

 挨拶の言葉に驚きの色が混ざったのも当然だった。そこに立っていたのは、見知った自分の部下の姿ではない。

 

「おはようございます、お嬢様」

「誕生日おめでとう」

「どうしました? そんなに驚いた顔をして」

「朝食会には僕たち聖杯がご案内します。さあ、どうぞ」

 

 口を挟む間もなく畳み掛けられたフェリチータは、驚きと戸惑いを隠せないまま彼らに促されて部屋を出る。

「あ、ありがとう。あの、もしかしたら今日の朝食会は……」

「その様子だといたずら好きな部下からは詳しい話を聞けなかった、っていう感じですね?」

 ノヴァに対しての日頃の行いを棚に上げたルーチェは、どうしようもない人たちですねと笑う。

「では移動しながら、話しましょう」

 スクーロがフェリチータを先導し歩き始めた。

 

 

「今日の朝食会の参加条件は聞きましたか?」

「参加条件……大アルカナを持っていないか大アルカナを2つ以上持っていることって聞いたけど……でもそれは冗談でしょう?」

「至極真面目な話だよ。だからうちの幹部も少し残念そうだったかな」

 フレッドの言う事は冗談なのか本気なのかわからない。

「ノヴァも知ってるの?」

「それぞれのセリエの幹部には報告済みです。それに幹部長の許可は取りましたし、午前中は諜報部が主に動いてくれています」

 確かに午前中は諜報部を中心に、というのは聞いていた。ではダンテやリベルタは朝から忙しく働いているのだろう。なんだか少し悪いような気もしてしまう。

「有事にはもちろん駆けつけますが、頼りになる各セリエの幹部始め、大アルカナをお持ちの皆さんが何とかしてくれるでしょう」

 それにいつもはお嬢様を独占している人たちなのだから、休養時間中のお嬢様が気にすることはありません、と剣のコートカード同様、フェリチータの懸念は無用とばかりに断言する。

 苦笑しながら、フェリチータを慮って告げられているであろうその言葉に甘えることにした。だが、後日大アルカナの仲間たちにも必ずお礼をしようと誓うのだった。

 

 それにしても、思いの外大きな話になっていたようだ。彼らの行動力には驚かされるばかりだ。

「私、今日は起きてから、驚くか、笑うか、喜ぶかしかしてないよ」

「それは良かった。皆お嬢様の誕生日を一緒に祝いたいんですよ」

 普段よりも柔らかな表情のスクーロに、フェリチータはありがとうと笑みを返した。

「お嬢様は可愛いなぁ! うちの幹部も可愛いけど少し反応が違うよね」

「今回みたいな状況だったら、『そんな暇があるなら、もっと職務の効率化を図るための準備に時間を費やせ!』とか言うんだろうねえ」

「で、その後、しまった言い過ぎたって言う顔で『き、気持ちはありがたく受け取っておく』なーんて言っちゃうんだよ……可愛いよね?」

「ふふっ! 確かに、可愛い」

 ルーチェとフレッドのやり取りに、フェリチータは声を上げて笑ってしまった。

 

 

「お嬢様だ!」

「お嬢ー!!」

「お嬢様ー!!!」

 

 『朝食会』の会場に到着すると、フェリチータはあまりの規模の大きさと驚きで硬直してしまう。まさか市場の中に、わざわざ特設の場を作っているなどとは夢にも思わなかった。いつもは朝の仕入れや買い物でにぎわう市場が、それ以上の人手になっている。

 どうやら市場に来ている住民たちの中にも、フェリチータを祝うために来た者がいるようだ。ここまで案内してきたアルベロ達は、いったいどういうことだと尋ねる緑の瞳に向けて楽しそうに口を開く。

「聖杯警備隊が巡回中に、商店の主たちに話を通しておいたのですよ。そこはノヴァ様にもご協力いただきました」

「お嬢様には当日まで絶対秘密っていうのが、皆面白かったみたいですね」

「驚く顔と喜ぶ顔が見たくて必死に頑張ったんです」

「さあお嬢様、金貨のコートカード達がお嬢様の席をご用意していますよ」

 4人の言葉を聞いたフェリチータは会場の中心へと視線を上げる。

 

「お嬢ー! こっちっす!」

 ジェルミがフェリチータのために椅子を引いて待っている。短い距離ではあったが、そこに移動するまでの間集まった、たくさんの人々から祝福の言葉をかけられることになった。

 

「ロッテです! フェリチーお嬢様、お誕生日おめでとう! お嬢様みたいになれるようにロッチータと一緒にがんばるね」

「ありがとう。ロッチータと仲良くね」

 

「どうもタンマーロです。おめでとうございます、お嬢様。お嬢様がガイダ・レガーロを作ってくれたおかげで、俺らすげー助かってるんです。ありがとうございます!」

「ありがとう。観光事業よろしくお願いします」

 

「お姉ちゃん……誕生日、おめでとう」

「エルモ! 来てくれてありがとう」

「……本当はぼくも『参加資格』?はないんだけど、お祝いしたかったから……ぼくとお姉ちゃんの秘密だよ?」

「クスッ……秘密だね」

 

 1人1人が名乗り、祝福し、思いの丈をぶつけ、フェリチータが応える。このやりとりがしばらく続き、ジェルミの元に到着した時には大分時間が掛かってしまった。

「うぅ……、遅いっす、お嬢ー」

「ごめんなさい」

 ジェルミが心底悲しそうな目をするものだから、フェリチータはそれ以外の言葉が出てこなかった。と、そこへ3つの影が揃う。

「祝いの言葉も言わず、今日の主役の姫君を責めるようなことしか出来ないダメ王に謝る必要はありませんよ。この残念な男は放っておいて、……さあ、お座りください」

「1人1人に応えるあなたの優しさに、街の人々も喜んだと思う。その高貴な姿は我々の誇りだ」

「ン。そのワンピース、とっても似合うよ。もっとゆっくり来てくれたら、さらにお嬢様のその姿をこの目に映せてもらえたのにネ」

 さすがはデビトの部下たちである。1人を除き、言葉の端々に洗練された持て成しが含まれている。

 散々な言われようだったジェルミはぐずりながら椅子を引き、そこへフェリチータを促した。腰掛けると自然と視線をあげることになる。視界にはコートカードやレガーロの住人たち。……ふとフェリチータは気になっていたことを尋ねてみる。

「ところで、今日はなんでみんなネクタイをしてないの?」

 いつも隙無くスーツを着こなす聖杯だけでなく、金貨の面々までネクタイをしていない上に、ジャケットも着ていない。

「欲情シた?」

「してない!」

 ロロのからかうような言葉で頬を赤らめたフェリチータは、打てば響くように答えを返す。

「仕事じゃなくて、オレらが個人的にお嬢をお祝いしたいって気持ちのあらわれっす! お嬢のワンピースもいいっすねー。これが17歳の色香って奴っすか!」

「ジェルミの褒め言葉は洗練されてないンだよ。しかも誉めてるところがボクと被ってるし。後でカポに報告するから」

「はぁ!? ちょ、そーいうの困んだよ。またカポにケツ蹴られるって!」

 その様子にフェリチータはくすくすと笑い続ける。どのセリエも幹部との仲は良好なようだ。

 

 

「お待たせー! 美味しいパニーノちゃんたちを連れてきたぞー!!」

 フェリチータの前にはずらりと美味しそうな料理が並べられる。

「ありがとう、パトリック」

 やはり料理は棍棒が担当だったようだ。

「いやー、お嬢を喜ばせるために市場のおばちゃんたちに協力してもらったんで、味は確かだと思います! な、お前ら!」

 パトリックは、やはり同じように料理を運んできた2人に目をやる。

「ばっちり味見しました! 味は責任もってお勧めします! えっへん」

「ていうか、おめーは味見って言いながら、食いすぎなんだよっ! お嬢の分が無くなっちまうとこだったじゃねえか」

「だって親分がいないんだから、俺が立派に代わりを務めないと。これは棍棒の意地ってやつだよ」

 確かにここにパーチェがいればイゴールと同じ、いやそれ以上の味見をしていただろう。

「「あいたっ」」

 クラウディオとイゴールのやり取りにピノが同時に拳を落とす。

「はい、邪魔だからね2人とも。そんなところばっかり親分の真似しちゃ駄目だって」

「暴力反対~!」

「おれは味見じゃなくて巻き添え食っただけだぞ……」

 すごすごと道を空ける2人。その空いた場所へ立ったピノは、オレンジ色のしぼりたてジュースを机に置いた。

「お嬢、これ乾杯用のスプレムータダランチャです」

「ありがとう」

 ピノからグラスを手にとったフェリチータを見て、パトリックは細い目をより細くして満足そうな笑みを浮かべた。

「さて、と。ジョルジョ、あとはよろしくな!」

 いつの間にやってきたのだろうか、剣のセリエが集まってきており、パトリックの代わりにフェリチータの隣にジョルジョが立つ。

 フェリチータを見てにこりと微笑むジョルジョもまた、いつにないラフな姿をしている。その手には先ほどフェリチータが手渡されたものと同じグラスがあり、周囲の人々も同様だった。

 彼は対面にいるグループに向かって右手を上げる。

 

 アコーディオン、ヴァイオリン、ファゴット3人の演奏家がメロディを奏で、タンバリーノを打つ者もいる。

 流れ出した音楽はフェリチータもよく知る歌だ。

 

 Tanti auguri a te !

 Tanti auguri a te !

 Tanti auguri Felicita!

 Tanti auguri a te !

 

 会場に集ったレガーロの人々はもちろん、各セリエの14人×4=56人の小アルカナ達の陽気な大合唱に、フェリチータは喜びに胸が満たされるような思いだった。

 

「お嬢」

 そっと呼ばれ、乾杯を促されたのだと理解したフェリチータが立ち上がり、高々とグラスを掲げる。グラスを持つ右手には花の環。

 

「みんな、今日はありがとう!」

 それ以外に言葉はない。

 

「サルーテ!」

 

 フェリチータの言葉を聞いて、皆が高らかに唱和する。

 

「サルーテ!!」

 

 

 

 並べられた食事に手を伸ばし、人々が楽しく歓談を始めたところで、そばにいる剣のセリエたちを振り返った。

 

「素敵な花束をありがとう。大事にするね」

 笑顔を浮かべるフェリチータの右手首には、花で作られた腕輪が巻かれている。

 そっと右手に触れ、もう一度ありがとう、と応えると、スート達もコートカード達もその一言が聞きたかったんだと、嬉しそうに照れたような笑みを浮かべている。

「それ、朝作ったの? 忙しかったんじゃない?」

 ラファエロの視線の先には花の腕輪がある。

「花の香りで早起きしたから、腕輪なら作れるかな、と思って。嬉しかったから」

「ご婦人の寝室に勝手に入ってしまい、すまなかった」

 アントニオの顔には、謝罪の言葉が直接書いてあるようだ。

「ううん、気にしてない。こんなこと初めてだったから驚いたし、嬉しかった」

「それなら何よりだ」

 爽やかなジョルジョの笑顔に、リボンのメッセージを思い出す。

「ジョルジョの予想通り、17歳になって初めての笑顔はジョルジョのものだったよ」

「……はははっ! それは嬉しいな」

 一瞬目を丸くしたジョルジョは一転声を上げて笑った。こんな風に声を上げて笑う姿を見るのは初めてだ。

 悪戯に成功した大人と言うのはこんな顔をするのだろうかとまじまじ見ていると、納まらない笑いの中流された視線に、フェリチータはどきりとした。

 その時後ろからシモーネの腕が回り込んだ。

「ひゃっ」

「ねえ、お嬢」

 耳元でささやかれる言葉は優しさが滲んだもので。

「何も不安になることはないからね。私たちは今日のパーティで何を発表されても、お嬢についていくって決めてるんだから」

 その言葉に思わず振り返ると、緑の瞳に自分の姿が映っている。

「今日のパーティだけじゃない。これは今日だけに限らない、私たちの誓いよ」

 アントニオがシモーネ近い、とこぼすのが聞こえる中、みんながシモーネの言葉に頷く。

「何があっても私たちはお嬢の味方。せっかくアルカナ・デュエロに優勝したんだもの。どこの馬の骨ともわからない奴とくっつくことなく、私たちのお嬢でいてちょうだい」

「ずっとは無理でも、1、2年は良いと思う」

 ラファエロの言葉に再度全員が頷く。

 

 フェリチータは、どうしようもなく優しい人たちに囲まれる幸せを噛みしめた。

 

 

END  

 

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アルカナ・ファミリア ドラマCD 
「Il dolce Regalo」 vol.1 -ROSSO-
出演:リベルタCV.福山潤/ノヴァCV.代永翼/
パーチェCV.杉田智和/ダンテCV.小杉十郎太
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定価:2,625円(税込) 発売中

 

 

 

 

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